何を焦っているのか分からない。焦って居るのかどうかも分からない。時計より正確なものが遅れて、忘れ様として居た期待を数日間味わった後の落胆が、このままで良いのか?と口煩いのかも知れない。この落胆の尻に敷かれる侭で居るのは悔しいので、その日を境に俳句を始める事にした。
昔むかし、恋が一大事だった頃、良く詩を書いたものだった。詩に逃げて、言葉を様々に入れ替えては、二進も三進も行かない恋を手中で転がしていた。あの頃の様な恋をしなくなったのを別に惜しいとも思わないが、夫との暖かな日々と生活に追われて、何も本当に観ようとして居ないのでは無いかと思うと怖くなった。
俳句の知識は全く無い。季語や歳時記の本も手元に無い。俳句サイトを頼み歩いて居ると、ひょんな事からドイツ語の俳句サイトにぶつかった。ドイツ語の俳句!3行でHaikuとする人も居れば、575の音節を保ち、季語や切れを工夫する人も居る。HAIKUフォーラムに一句だけ独訳を投稿すると、数分にして何人もの俳人が、私の拙いドイツ語を形にしようと、色々な改良案を提供して下さった。
リンツ駅構内で繋ぎの列車を待っている間、ふと思い付いて本屋に入る。店長らしい女性に「Haikuの本はありますか?」と試しに訪ねた所、「未だあるかも知れません!」と小走りに詩集コーナーへ行き、探して下さった。「ごめんなさい…」と彼女はほぼ項垂れ、「以前、此処に本当にあったのです」と恥ずかしい事であるかの様に謝った。「でも・・・お探しの本があれば注文出来ますけれど」と言いつつ、彼女はPCに向う。「私、未だ初心者でどんな本があるかも分からないので…」と断って、目に飛び込んで来たリルケ詩集を買った。
リルケは余りに有名で、今迄和訳でも何故か読まずに過ごして来た。独りでは分からない事だらけなので、毎晩一詩ずつマルクスの助けを借りて読む事にした。彼も詩を読むのは久し振りだと言う。たった6行の詩に就いて二人で考えを交わす時間は、思ったよりも早く過ぎる。ワインの無くなるのも早いのが、珠に瑕だが。
子供の居ない生活。育つ子供が居れば、その成長を年輪とする事も出来よう。しかし、私はどうだ?起きて、PCに向って、空腹を満たす為に料理をして、出勤をして、PCに向って、床に入る。そうやって、何年も何年も過ぎて行く。
下手は承知で、取り敢えず毎日17字を残して行こう。そう思うと、朝目覚めてから床に入る迄、題材探しで心が動く。言葉探しも懐かしい。正月が又訪れる迄続くかどうか…。
575 Haiku in JP & AT 一日一句和語と独語で


