昨夏、「プロヴァンスはどうだった?」と訊かれたら、「薮蚊が獰猛だった」とまず答えた。蚊さされアレルギーの私にとって、キャンプ場テント生活に於いては、四六時中の悩みだったと言っても過言ではない。今回のアンダルシア、「蚊が居ない程乾いていた」と答える代わりに、特に印象に残った二つの出来事から書いてみる。
初めて南仏を訪れた時の事、「南欧の人間は、相手が旅行客だと分かると勘定を誤魔化すから気をつけなさい」と言われた。マルセイユの魚料理専門店でのお勘定の折、彼女の予測が運悪く当たってしまった。何に付けても「だらしない・ルーズ」なのが南、「融通が利かない正直者」が北、そんなイメージは確かに無くは無い。
今回私達が10日間の内7晩を過ごした自然公園「Cabo de Gata」とその周辺は何処も、食事の値段が非常に高かった。オーストリアでの食事は、それ程安い方だとも思えないが、その平均値より多かれ少なかれ越えている。公園内の海岸はどれも非常に綺麗だし、その周辺の町の様に大きなホテルが聳え立つ事も無い。その静かで透明な海へ徒歩で行けるバンガローを二人で借りた。オーナーはドイツ人女性なので、言葉に困る事も無い。バンガローと言っても彼女の家の離れであり、KAWAIのしっかり調律されたグランド・ピアノがあり、生活に必要な物は洗濯機以外全て揃って居る。広告に「洗濯機在り」との記述も大きな決め手となったのだが、訊けば「私の所で洗濯するから出して置いてね」と言って下さる。家の配置上、家の住人は必ずその離れの前を通らなければ外に出られないのだが、私達がそっとして置いて欲しいのを直ぐに感じ取って下さった。一泊70€とかなり高かったが、このバンガローに決めたのは、「グランドピアノ在り!」と感嘆符があったからで、この一週間思う存分弾こうと何冊か楽譜も持参した。
生まれてこの方、一軒家に住んだ事が無い。弱音ペダルの侭弾けば鬱憤が溜まるし、学校で練習をすれば根を詰め過ぎるしで、この1週間あれこれ浮気をしながら色々な懐かしい曲、新しい曲に一音一音耳を傾け弾くのは、何とも言えない贅沢だった。夫も専門書を横で読みながら、文句を言うどころか、色々リクエストしてくる。のんびりとした豊かな時間…。
ところが、いざ支払いの段になって、オーナーのドイツ人女性が「一泊80€、全部で560€です」と言い張った。確かにそのホームページ上の値段表示からすると、最後の晩だけ80€ゾーンに入って居たので、合計500€の筈なのだがと言っても「私はそのホームページの事は知らない」と譲らない。ついその前日、彼女自身が「7月の終わり頃から人が多く訪れる」と言って居たにも拘わらず、いざお金の事となると「7・8月はハイシーズンだから」に変わる。結局領収書も貰えず、私達は折角の素敵な1週間がこの事だけで汚されるのを嫌って、直ぐに彼女の請求額を支払って出た。
その晩はグラナダの「Plaza Nueva 」に面する三つ星のホテルに泊まったのだが、これだけ旧市街のど真ん中にあるにも拘わらずダブル一泊45€。二人、熱に浮かされた様に、更ければ更ける程火照るグラナダの店を梯子する。濃厚で優しいグラナダ・ワインを一本頼むと、7種ものタパスがおつまみとして付いて来た・・・とんでも無い、こんなに食べられないと思う程の量なのに、突出しの料金は全く請求されない。
大都市のグラナダの方が遥かに安いと、びっくりしたのも束の間。翌日Alicanteへ向かう途中、Vélez-Blancoと言う町に立ち寄り、そこの公共レストランに入ると、今度は全く値段が書かれていない。勿論お品書きも無い。身振り手振りでサングリア、ビール、トニック・ウォーター、ガスパチョ、ミックスサラダに羊のグリル二皿を頼み、最後にお勘定を頼むと、若い給仕が「27€です」と言うので、私達二人、今迄の半額に近いと大喜び。私が日記に記録する為に「請求書もお願いします」と言うと、給仕が暫く戻って来ない。お手洗いに立って戻って来ると、彼がレシートを渡してくれるが、直ぐその横で母親らしい女性が思い切り顰め面をして、私に「そのレシートをよこせ」と言う。若い給仕は新しくレシートを書き直している。見れば、合計がたったの20€になっているでは無いか。しきりに彼は「perdón」を繰り返し、私達は愉快に笑った。
ドイツの「Dame」にぼられ、スペインの「Madre 」の正直さに感動し、とかく人種や出身で一絡げにする馬鹿馬鹿しさが身に沁みた旅だった。
Tags: Cabo de Gata, アンダルシア, グラナダ
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August 30th, 2009 at 9:34 am
いいたびでしたね。これは、自動車で移動したのですか?ヨーロッパは大陸で地続きなので、読んでいてうらやましく、少し、なる。
August 30th, 2009 at 8:09 pm
takranke 様
コメント、有難うございます。
Alicante空港からレンタカーでアンダルシアの東側を回りました。
去年の夏は、墺太利からプロヴァンス迄自家用車で旅をしたのですが、流石に疲れました。
田舎を回るなら、やはり車での移動は楽ですね。
色々余裕が在れば、自家用車でのんびり気ままに移動しても良いなと夫と話しています。