パンに塗って食べられるラードを作る為、美味しい焼豚を作ろう!と思う様になるとは思わなかったのだが、最初にラードをたっぷり塗った黒パンを口にした時、多分ガイジンさんが納豆を初めて口にする勇気もこんなものかと思ったものだった。その最初のラードパン(Schmalzbrot)が非常に美味しかったのもラッキーだった。ラードだけでなく、煮凝りやこんがり焼けた堅皮の粒等も混じって居て、焼豚にどんな味付けが施されて居たのか知りたくなる深い味わいだった。
焼豚の作り方は然程難しく無い。堅皮の付いた首の辺り(Schopf)だとジューシーに出来上がるが、ばら肉(Karree)でもOK。焼豚(Schweinsbraten)への思い入れは人それぞれ、レシピも色々なのだが、キャラウェイと葫、塩・胡椒、スープがあれば直ぐに始められる。
この焼豚で一番大変なのが、堅皮に小さく賽の目に切り目を入れる作業である。新しいセラミック包丁で面白い程切れたので、余り間を置かずにもう一度作ろうとしたら、その包丁は全く使い物にならなくなって居た。この作業さへ無ければもっと頻繁に作って居るだろうから、急速に太るに違いない。皮に切り目を入れたら、キャラウェイ、微塵切りの葫、塩・胡椒を擦り付ける。オーブンを220℃に温めておいて、オーブン用の器に少しだけ脂を引き、レンジの上でまず豚の皮を下にしてしっかり焦げ目を付ける。
カリカリになった皮を上にして置き直し、茶碗に半分程のスープを上から掛け回す。スープの代わりに黒ビールを入れる人も居る。そうして、温めて置いたオーブンに入れる。1時間程放置した後180度に落とし、下に溜まった煮汁とスープの混ざった物を肉の上から掛ける。20分程度の間隔で汁を掛けて上げる。賽の目に切った皮の表面が膨れ上がり、肉に串を突き刺して透明な肉汁が出て来たら出来上がりである。肉の大きさにも依るが、2時間以上は掛かる筈だ。早く仕上げたい時は、真っ二つに切ってしまう。
付け合わせに土地柄が出ると言っても過言では無い。センメルを団子にした物、キャベツを丸ごとスープで煮込んだ物、ジャガイモ・・・そう、ジャガイモは別途で煮た物を、最後に肉の横で一緒に焼くと美味しい。最初からセロリや人参等と一緒に豚を焼く人も居る。焼き上がった豚肉の中で、パチパチと音を立てそうな程こんがりと焼けた堅皮は一番のご馳走である。肉自体も勿論美味しいのだが、これは、冷めてから薄くスライスし、下ろし立ての西洋山葵やピクルスと共にセンメルに挟んで食べるともっと美味しい。
焼いた後の器が冷め切らない内に、汁をガラス瓶等に移して冷蔵庫に入れる。堅皮の小さな破片(Grammel / Grieben)が混ざると日持ちは悪くなるが、美味しさは増す。これを塗るパンはライ麦パンと相場が決まっている。センメル等の白いパンに付けて食べた事が無いのだが、脂っこさが重みを増すだけだろうと思う。ライ麦の入った黒パン、特にサワードウ(Sauerteig)と言われるパン種で作られたパンの方が合う。自家製ラードをたっぷりと塗った上に玉葱のスライス、カイエンヌペッパー等を散らして頂く。焼豚が一番美味しいのはオーバーエーストライヒだと、チロル出身の夫は言う。本当かどうかは知らないが、強制収容所から解放されたばかりかと思われる体つきだった夫にもぷよぷよと浮き輪が付き始め、神経もそれ程苛立たなくなった。豚の脂を侮るなかれ…。
Tags: ラード, レシピ, Schmalzbrot, Schweinsbraten
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